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船内は階級社会
船は、一般社会とは違って、一度出港してしまうと、次の港に着くまで船内での自己完結性が求められます。また、乗り組む船員は運命共同体となるので、規律を厳しく求められ、情報が発達した現在でも、本質的には変わっていません。
すなわち船長以下、船内に純然たる階級社会が形成されているわけですが、それば、役職や命令系統はもちろん、居住スペースの位置にも顕著に表れています。
どんな船でも、ほとんどの船長室は、ブリッジ下の階の右舷側にあります。(囲んだ場所が船長室)
また、その下の階は、機関長や1等航海士以下3等航海士などの士官(オフィサー)の居室となり、その下の階には、甲板長(ボースン)や一般船員などいわゆる部員(クルー)の居室が配置されています。
以前、私が2等航海士で乗船したコンテナ船では、ブリッジから2階下に1等航海士や3等航海士と共に居室が設けられ、机やシャワーなどの洗面台が備え付けられた8畳一間の居室でした。
しかし、その下の階にあった部員(クルー)の居室は6畳一間でシャワー設備が個室になく、シャワー室という共用スペースが設けられていました。
そこで、今回は、なぜ、船長室がブリッジの下の階の右舷側にあるか調べてみました。これには、北欧で活躍したバイキングの歴史までさかのぼる必要があります。
バイキング時代、船の向きを変える為にオールのような物(舵の代用)は船の右側につけられており、その為、舵をとる人(舵を操る者)は船の右側に位置していました。
この「舵を操る舷(Steer Board)」を意味する「ステア ボード」がなまり、現在では、右舷側のことを「Starboard」(スターボード)と言うようになりました。
なお、左舷側は英語で「Port」と言いますが、これは、右側に舵が付けられているため、入港すると左側を岸壁に付けていたためと言われています。(諸説あります。)
しかし、こうした昔の船の形状の影響が現在でも、海上のルールで残っています。
例えば、昔から海上では右側航行が原則となっていますが、2船間において衝突のおそれが生じた時、見合い関係から相手船より先に早く衝突点から離し(避航船→舵を切って避航動作をとる側)、他方の船は現状を維持(保持船→進路・速力を保持する側)のいずれかに該当するかを判断し、適切な対応をとらなければなりません。
他船との見合い関係で、左舷方向から来る船舶については本船側は保持船となることが多いので、航海当直中の注意は、主に本船が避航動作をとらなければならない右舷方向に集中、特に右舷側のあらゆる船の動向に気を配ることになります。
この為、船長室は何時でも右舷側の視界が充分に確保できる場所、すなわち見張りに支障のない場所や視野を遮る事のない場所に設置されることになります。 因みに、航海士の部屋も船長室と同様に右舷側に配置されている船が多く、又は前方の視界が充分に確保できる場所に配置されている船も多くあるようです。
(日本船主協会HPより)