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コンテナ船を大きくする方法とは?
前回、コンテナ船の船体延伸工事へで、MSCが計画しているコンテナ船の船体延伸工事についてお伝えしましたが、コンテナ船のコンテナ積載量を増加させる工事は色々な方法がありますので、今回は、そのいくつかをご紹介したいと思います。
1 縦方向に延長する方法
船体中央部を切断し分離させ、新たに作った船体を挿入、合体させるもので、一番メジャーな方法かと思われます。船の機関部(エンジン)や船の頭脳にあたる操舵関係の機器関連を触ることなく、コンテナ積載量を増加が可能で、工事期間も、費用も大幅に節約出来ます。これまでも既存コンテナ船でコンテナ積載量の増加を図る場合には、この方法が用いられていますが、いずれも1万TEU未満の中型以下のサイズで行われており、MSCのコンテナ船のように1万TEU超の大型船で、この種の工事を行うのは初めてのケースになります。映像は客船の改造工事になりますが、コンテナ船も同様の方法で工事を行います。
2 垂直方向に延長する方法
次は、船を操船する船橋(ブリッジ)やラッシングブリッジを嵩上げすることにより積載能力を増加させる方法です。ラッシングブリッジとは、甲板上に積載するコンテナの固縛などメンテナンスを行う足場のことで、船体横方向にコンテナを挟み込むように設置されているものです。
(出典:https://blogs.yahoo.co.jp/kumachin_fukuyama/7084437.html より)
こうした方法により、過去、Maerskのコンテナ船のコンテナ積載能力のアップが図られています。
マースクラインは、11年に自社保有船隊のうち8600TEU型船“S”クラスに属する16隻を対象に改造工事を行うことを決定。コンテナ積載能力を1万TEUまで引き上げている。“S”クラスは1997年から2002年にかけて建造された大型コンテナ船で全長346.98メートル、全幅42.8メートル、最大喫水14.5メートル、10万4690重量トン。“S/C”クラスと呼称されることもあり、コンテナスロットは縦21セクション、幅17列となっている。細かく仕様を変えながら計19隻が建造されている。工事の内容は、このうち16隻についてブリッジの高さを嵩上げすることにより、コンテナを1段分高く積載できるようにするというもの。後期の3隻は設計段階からブリッジが1段分高く作られていたため、改造工事からは除外された。
またマースクは、16年にも“E”クラスと呼ばれる1万5500TEU型船の改造工事を行っている。「Emma Maersk」などに代表される“E”クラスは、かつてグループ傘下にあったオデンセ造船所で建造された超大型コンテナ船だ。06年から竣工が始まり、シリーズ全船で8隻。当初は積載能力を公称1万1000TEUとしていたが、実際の積載能力は約1万5500TEUと当時のコンテナ船の中では最大船型だった。全長397メートル、幅56.4メートルと、船体サイズは現在の1万8000〜2万TEUクラスのコンテナ船に匹敵する。一方、現在の超大型コンテナ船の主流であるブリッジとファンネル部分を前後に分離するツイン・アイランド方式を採用していないのが特徴だ。
この時の改造工事では、ブリッジの居住区やラッシングブリッジの嵩上げにより、積載能力を最大1万6500TEUまで強化。同時に減速運航により適合したバルバスバウの改造およびプロペラの交換を行い、燃費性能も高めている。(2018年1月25日付け日刊カーゴより)
(EMMA MAERSK)
3 左右方向に延ばす方法
コンテナ船を上から見て船首から船尾までを切断して、その間に新たな船体を挿入するものです。一番、エンジン部分も操舵部分も改良を加えざるを得なく、最も手間がかかると思われます。試験的な意味合いなのか判りませんが、過去、こうした工事が行われたようです。
ただ一部では例外的に、船体を“縦に”切断して幅を拡張する工事が行われたこともある。
この工事は、15年に中国の修繕大手、上海華潤大東船務工程が実施したもので、ドイツ船主NSBが保有する4872TEU型船を対象に行ったもの。船首と船尾を除く船体を縦に切断し、船艙のほぼ中央にコンテナ3列分の船殻ブロックを挿入。船首両舷のラインを補正するため全長も伸ばしたほか、両舷外板に約200メートルにわたり鋼板を追加するなど補強した。これにより船舶の幅を7.56メートル、全長を8メートル伸ばし、積載量を1464TEU増やした。
工事はまずバルバスバウを除く船首上部を切断した後、バウ部分の船首下部と居住区と機関室のある船尾を切断。残る船体について、もともとは船艙がコンテナ12列だったが、左舷から8列目、右舷から5列目にあたる部分を切り離し、コンテナ3列分の船殻を挿入した。幅を拡張した船体に従来の船首を接合すると船首両舷のラインのカーブが急になるため、船首と船艙の間にブロックを追加して全長を伸ばした。また強度を保つため、デッキ真下の両舷外板に長さ200メートルほどにわたって厚さ60ミリほどの鋼板3列を打ち付けるなどした。居住区や機関室部分の工事は基本的に行っていない。
これにより、従来は全長275メートル、幅32.2メートル、積載容量4872TEUだったが、これを同283メートル、同39.76メートル、6336TEUに大型化した。またリーファープラグを追加し、以前の560個から1131個に増やした。
船艙のほぼ中央に船殻ブロックを接合した(色の違う箇所が工事箇所)
(2018年1月25日付け日刊カーゴより)
こうした工事により、竣工した段階の船体要目やコンテナ積載個数から変わってくることがありますので、船の要目などを見る時は注意が必要です。