【送料無料】 世界のコンテナ輸送と就航状況 2017年版 / 日本郵船調査グループ 【本】 価格:10,260円 |
コンテナ船の減速航行効果
最近は経済状況が上向き、あまり話題にならなくなったこの問題について取り上げたいと思います。各船会社もコンテナ船の運航コストの削減については涙ぐましい努力を日々行っていますが、2014年頃から2016年にかけて海運界に厳しい不況の風が吹いていた頃、この話題が盛んに出ていました。韓国の韓進海運が倒産する前後の話です。
具体的には、輸送期間の増加には目をつぶり、従来の航路サービスに追加のコンテナ船を投入、各コンテナ船のサービススピードを落として経費削減を行おうとするものです。例えば、現在7隻で1つの航路サービスの運航を行っている場合、1隻追加して8隻体制にすることにより各コンテナ船のスピードを落とし、燃料費の削減を図ります。
現在のコンテナ船の主機関は、ほぼディーゼル機関であり、陸上のトラックと同じエンジン(ただし燃料は軽油ではなく重油)が使われていますが、なぜ、各船会社が燃料費削減にこだわるかと言えば、船を運航するためには必要不可欠であり、かつ、大量に消費するものであり運航コストの大部分を占めるからです。
また、燃料価格は為替の影響も受けます。例えば、コンテナ船以外にも自動車船やバルカーなど運航する日本の大手船会社では、1トン(メタリックトン:MT)が1円変動すると年間1億7千万程度(2016年)の差が出てきます。また、船腹量60万TEUクラスのコンテナ専業の船会社では1ドル/MTの上昇で年間200〜300万ドル程度のコスト増となります。
船会社としては、燃費向上のため低燃費機関の導入や、船型の改良、又はスクリューの改良や燃料に水を混ぜるエマルジョン化などのハードで対応出来る部分と運航時のバラスト水の調整や最適ルートの選定などソフトの部分を組み合わせていますが、燃料費削減に最も効果があるのが、前述の投入隻数を増やして各船の運航スピードを抑えることです。
例としてアジア(中国・海峡地)10港(重複寄港含む)、北欧3港に寄港する欧州航路に就航する大型コンテナ船で比較してみます。欧州航路には近年18,000TEU型〜20,000TEU越えの大型コンテナ船が就航していますが、考え方は同一となります。
【前提】 18,000TEU型のコンテナ船を8隻投入し、サービススピードは25ノット、1ラウンド56日の航路に1隻追加して、9隻とし、サービススピードは21ノット、1ラウンド63日とします。また、航行日数はそれぞれ39日、46日(それ以外は停泊日=荷役などにより停船している期間)とし、燃料補給はシンガポールで行いC重油は390$/MT(2018年2月1日現在)で試算します。また、主機関以外にもC重油が使われるとともに、海域によっては、グレードの高いA重油を使うことがありますが、今回の試算では省略します。
18,000TEU型コンテナ船の代表的な船型(MAERSK トリプルEクラス)→試算したコンテナ船とは関係ありません。
| アジア〜北欧航路 |
18,000TEU×8隻 |
18,000TEU×9隻 |
|---|---|---|
| 実航海日数 | 39日 | 46日 |
| 燃料消費量 | 330MT/日 | 214.5MT/日 |
|
1航海燃料消費量 |
12,870MT |
9,867MT |
| 1航海燃料費用 |
501万9,300ドル |
384万8,130ドル |
|
1隻あたりの |
6.5航海 |
5.8航海 |
|
1隻あたりの |
3,262万5,450MT |
2,231万9,154MT |
| 1ループの年間消費量 |
2億6,100万3,600ドル |
2億87万2,400ドル(端数切り上げ) |
結果、1隻追加して運航した方が約6000万ドル(約63億6千万円:106円換算)の燃料費が節約出来ることになります。ただ、1隻を追加する用船料が新たにかかりますので、高めに2,200万ドル/年とみても、約4,800万ドルの削減が可能という計算になり、いかに燃料費の削減が大きいかお判りになったと思います。また、為替の状況も見逃すことは出来ません。
一般に、速力を2倍にしようと思うと、燃料消費量はその2乗になると言われています。実際にはそれぞれの主機関の性能がありますので一概には言えませんが、加速度的に燃料消費量が増加することをお判りになるのではないでしょうか?
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