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パナマ運河の通行料はいくら?
まず、パナマ運河の構造を見ていただきたいと思います。
パナマ運河は、アメリカによって1914年に完成した太平洋と大西洋を結ぶ3つの閘門からなる運河です。2016年6月までは、全長:294.1m、全幅:32.3m、喫水:12m(熱帯淡水において)、最大高:57.91mの船しか受け入れることが出来ませんでしたが、新パナマ運河が開通したことにより、全長:366m(+72m)、全幅:49m(+17m)、喫水:15.2m(+3m)、最大高:57.91m(旧パナマックスと変わらず)となりました。
数字では判りにくいと思いますので、あくまでもコンテナ船のイメージで例えるなら、これまで5,000TEU型が最大でしたが、11,000TEU型まで受け入れることが可能となった訳です。。
パナマ運河は、1999年12月31日までアメリカの管理下にありましたが、パナマに完全返還されており、現在はパナマ運河庁 (ACP)が管理しています。アメリカの管理下にある期間中は、運河通航料はスエズ運河と比べても非常に低く抑えられていましたが、これは、アメリカがこの運河を国際公共財として考えており、収益を目指さない考えを明確にしていたためと言われています。しかし、パナマに返還されたのちは、利益の極大化方針を打ち出し、2000年以降年3.5%の値上げを20年間継続する方針を示しており、利用各国から強い反対が表明されています。
パナマ運河の通航料は、船種や船舶の積載量、トン数や全長など船舶の大きさに基づきパナマ運河庁が定めており、パナマ通過時の算定基礎となるパナマトン数をベースに算出しますが、平均1トンにつき1ドル39セント、平均で54,000ドルと言われています。
パナマ運河と並んでアジアと欧州を結ぶためのスエズ運河の両運河では、それぞれコンテナ船の誘致に乗り出してしているようです。特に、パナマ運河は、現在、スエズ運河を通過しサービスを行っているアジア〜北米東岸サービス経由船を取り込むため、新しく通航可能となったネオパナックス型を対象にした割引を10月より行う予定です。それを受けて、スエズ運河も今後、値下げで対応するようです。
実際に、パナマ運河通航に要する料金を見ていきたいと思います。
前述のとおり、パナマ政府は8月に、パナマ運河庁(ACP)のネオ・パナマックス型(パナマ運河拡張後、通行可能となった船型)を対象に、South Bound(南航:北米東岸→アジア)の通行料値下案を承認しました。
これは、6,000TEU以上のネオ・パナマックス型が、往航のNorth Bound(北航:アジア〜北米東岸)で通峡する際に、最大積載量の70%以上を積んで、28日以内に戻り、South Boundとして通峡するコンテナ船の料金を1TEUあたり10ドルから15ドル割引くというものです。
これは、最大積載量7,500TEUで復航の実入りが4,500TEUの場合、1航海で4万5千ドル、1ループで年間234万ドルのコストセーブが図られる計算で、復航時にパナマ運河を経由しないアジア〜北米東岸サービスに就航するコンテナ船に対するインセンティブとなっていますが、北米東岸諸港の物理的な港湾施設の制約もあり、思惑通りいくか不透明な状況とのことです。
通行料計算例
北航(North Bound)12,000TEU型が実入りコンテナ9,000TEU(消席率75%)を積載して太平洋側から大西洋側に通峡した場合の料金は、12,000TEU×$50+9,000×$35=$915,000(約1億65万円)
同じ船が南航(South Bound)で6,000TEU(消席率50%)を積載し通峡する場合、12,000TEU×$50+6,000×$20=$720,000(約7920万円)←現行より$90,000減
また、年間運河利用実績に応じた割引などもあります。
このパナマ運河通航の金額を聞いて皆さんはどう思われますか?
これまでも、パナマ運河の通行料の削減やリードタイム短縮のため、アジア〜北米東岸サービスを行う場合、直接コンテナ船で輸送せず、北米西岸のロングビーチ港やロスアンゼルス港などから鉄道列車で輸送するサービスも発達していますので、このパナマ運河のインセンティブが船社の目を引いて、パナマ運河庁(ACP)の思惑通りにいくか注目したいと思います。