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【台風21号】空コンテナはどれだけの風速に耐えられるのか?
9月3日〜5日の間に日本に襲来し西日本を中心に甚大な被害を与えた台風21号ですが、現在、その復旧に向けて関係者が全力で対応に当たっています。
関西国際空港の連絡橋に内航タンカーが衝突し、また堤防にプッシャーバージが乗り上げるなど様々な被害が報告されていますが、阪神港の各コンテナターミナルの復旧状況(9月7日現在)については、次のようになっています。
阪神港(神戸港・大阪港の復旧状況)(阪神国際港湾株式会社より)
神戸港では六甲アイランドRC6/RC7バースを除き復旧、また、大阪港は概ね復旧したようです。六甲アイランドRC6/RC7バースは、日本郵船神戸コンテナ・ターミナルとして稼働しています。現在はONE運航船を中心に寄港していると思いますが、今回の高潮と強風により一番被害を受ける形となりました。
こうした被害の中で、広範囲でコンテナターミナルに置いてある空コンテナが風で飛ばされる事例がありました。そこで今回は、空コンテナは、どの程度の強風に耐えられるのか調べてみました。
まず空コンテナですが、各船社や製造メーカーで仕様がで若干変りますが、一般的な自重は、20フィートで2.2トン、40フィート3.7トン、ハイキューブの40フィートで4トンとなります。リーファーコンテナは冷凍機を備えているため、それぞれ0.5トン増となります。
コンテナターミナルでは、台風が近づくと、強風による空コンテナの横転を防ぐため、空コンテナ同士を集め(列数を増やす)と共に、積み上げる段数を減らす作業を行っています。さらに、コンテナ同士を金具やスリングベルトの様なもので固定しています。参考になる動画がありますのでご覧ください。
2003年に発表された東京商船大学の研究報告の中で、コンテナヤードにおける空コンテナの耐風性について発表されています。結果的に、コンテナの段数を積み上げれば積み上げるほど安定度は低下し、横列数を増やせば安定度は増します。また、40フィートよりも20フィートコンテナの方が動きやすく、コンテナの長手方向に直角な方向に対して15度から30度の範囲の風向のときが最も滑動しやすいと言う結果です。
それでは、どれだけの風速で動き始めるのでしょうか?同報告書でその結果も発表されています。
(1)風圧力分布については、 20ftコンテナのものと似た傾向にある。すなわち、過去において実験されている、20ftコンテナの風圧力分布をコンテナ長さ方向に伸ばした結果は、今回40ftコンテナにおける同じ条件での実験結果とほぼ一致した。
(2)風力係数については、 2段または3段と積み段数の増加とともにその値が大きくなることがわかった。また、風向角の増加により横力係数は低減することがわかった。
(3)コンテナ前面における、風圧力中心位置については、 20ftコンテナにおけるものとほぼ同じ高さで、コンテナ高さに対し、底面より0.57倍の位置であることがわかった。
(4)風向変化がコンテナの滑動に与える影響については、コンテナの長手方向に直角な方向に対して15度から30度の範囲の風向のときが最も滑動しやすいことがわかった。
(5)滑動開始風速について20ftコンテナと40ftコンテナを比較すると、 20ftコンテナの方がより小さい風速で滑動を開始することがわかった。
(6)コンテナの横列数を増やすことでコンテナの滑動および転倒は起こりにくくなることがわかった。しかし、最前列のコンテナについては横列数を増やした場合でも注意が必要である。
(7)強風時のコンテナの事故については、その主たる原因はコンテナが滑動することであり、その滑動については、コンテナの積み段数の増加により起こりやすくなる。また、 40ftコンテナよりも20ftコンテナの方がより小さい風速で滑動を開始する。
台風21号襲来時の風速ですが、阪神港から離れている四日市港の記録が残っています。これを見ていると、四日市港ですら危険な状態だったことが判ります。なお、四日市港で台風の中心に最も接近したのは14時から15時でした。
阪神港を襲った台風21号の風速は、これよりも大幅に強かったと考えられますので、高潮によるコンテナターミナルへの海水の打ち込みなどを考えると、確実に固縛をしていても被害を防ぐのは難しかったのではないかと考えられます。
いずれにしても、神戸港の早期復旧を祈りたいと思います。